
レタスは約95%が水分で構成されています。食卓に欠かせない需要の高い農産物であるレタスは、その高い水分含有量ゆえに食品供給チェーンに独自の課題をもたらします。消費者はみずみずしくシャキッとしたレタスを求めますが、水分子構造のメカニズムによって保存可能期間(賞味期限)は非常に限られています。食糧不足や資源保全、食品ロス削減がますます重要視される現代において、このプロセスをより深く理解することが強く求められています。
そこで、ハンガリー・ブダペストにあるハンガリー農業生命科学大学の計測・プロセス制御学科と、日本・神戸大学アクアフォトミクス研究部門の研究者たちが連携し、レタスの低温保存中における変化を迅速かつ非破壊的に評価し、水分子構造をモニタリングしながらアクアフォトミクスによってその仕組みを解明する方法を開発しました。
研究では、損傷のないレタス10玉を購入し、包装を外して洗浄や処理を行わずに暗所の冷蔵庫に保管しました。冷蔵庫は0~2℃、相対湿度91~95%に維持されました。5玉は分光解析に使用し、残り5玉は重量、水分活性、色素の基準測定に用いました。観察期間は、スーパーでの典型的な販売期間に対応する6日間としました。
分光測定は水の第一倍音領域(1300–1600 nm)で行われ、900スペクトルを収集。その後、保存初日に取得したスペクトルを基準として各日のスペクトルを差し引き、差スペクトルを作成しました。これを用いて水マトリックス座標(WAMACs)の特定、アクアグラムの作成、水スペクトルパターン(WASP)の表示を行いました。
葉のWASPの変化を観察することで、低温保存により水分の喪失、細胞壁の損傷、細胞内水の放出、自由水や弱い水素結合水の減少、防御機構の活性化が起こることが明らかになりました。これらの変化は、色素、重量、水分活性、および特定の分子構造や機能に関連する吸収帯での分光吸収の変化として観測されました。また、レタスの外葉と内葉の間で明確な違いが確認されました。
色素の変化は、β‐カロテン(454 nm)、クロロフィルb(479 nm)、カロテノイドとクロロフィルの複合吸収(678 nm)の3つの吸収ピークで評価されました。454 nm帯では保存初日から最終日にかけて平均吸収が有意に減少し、479 nmと678 nm帯では逆に有意に増加しました。
重量の変化は呼吸、蒸散、自然劣化、微生物活動によるもので、初日が最も重く、2日目・4日目・5日目は小さな変化を示し、3日目に大きな減少が見られました。
水分活性は食品安定性の重要な指標の一つであり、化学反応に利用可能な水の量を示します。レタスの水分活性は重量変化と同様の傾向を示し、4日目に最小値となり、その後は徐々に回復しました。
これらの特徴の変化はすべて差スペクトルの吸収値に直接反映されました。外葉・内葉ともに1350–1400 nmおよび1500–1600 nmの範囲で吸収が増加し、1400–1500 nmの範囲では減少しました。これらの変化は、弱い水素結合水、強く結合した水分子、水と糖や水とセルロースとの相互作用、結晶水に対応します。さらに、外葉は保存直後から低温保存の影響を受けたのに対し、内葉は外葉による保護で影響が遅れて現れることも示されました。加えて、吸収値と保存日数との間には直線的な関係が確認され、測定スペクトルから保存期間を予測できる可能性も示されました。

この研究の結果は、アクアフォトミクスがレタスを破壊することなく保存中の変化をモニタリングできることを示しています。本研究では、標準的な手法の応用に利用可能なWAMACsとして特定の水吸収バンドを同定し、レタス葉の水分子構造を記述するための新しいバイオマーカーをWASPに基づいて定義し、低温保存中における内葉と外葉の変化を特徴づけました。このようなアクアフォトミクス解析は、新鮮さのメカニズムをより深く理解するために役立ち、その結果、食品保存の改善や革新へとつながる可能性があります。
参考
[1] Vitalis, F., Muncan, J., Anantawittayanon, S., Kovacs, Z., & Tsenkova, R. (2023). Aquaphotomics Monitoring of Lettuce Freshness during Cold Storage. Foods, 12(2), 258.
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