アクアフォトミクスは、高速で非破壊的な分析を提供することにより、微生物の研究分野に多大な貢献をしました(Slavchev et al.2015, Remagni et al.2013, Nakakimura et al.2012, Slavchev et al.2017)。
微生物研究への適用例に3系統の異なる細菌株での増殖モニタリング(Slavchev et al.2015)があります。用いられた細菌株はプロバイオティクスとしての効果が高い株、逆効果となる株、どちらともいえない株、の3系統でした。その結果、細菌株のプロバイオティクス強度に応じて高精度での判別が可能であることが示され、判別に最も有益な吸収バンドは水の第1倍音にあることがわかりました。これは細胞機能全体にとって水分子システムが重要であることを示唆しています。
水スペクトルパターンに基づいてグループを比較すると、プロバイオティクス細菌株は、プロトン化された小さな水クラスター、自由水、および弱く水素結合した水クラスターの数が多いという特徴があることがわかりました(Slavchev et al.2015)。
この研究により、増殖過程において特定の水分子群が果たす役割についての理解が進みました。強力なプロバイオティクス細菌には、水素結合の少ない水分子群が多く含まれているということがわかったのです。この発見がきっかけとなって健康に有益な効果をもたらすプロバイオティクスをより理解できる可能性があります。
水の結合音の第1倍音領域(1100〜1300 nm)をもちいた場合でも、アクアフォトミクスアプローチによって同様にプロバイオティクス細菌株を迅速に判別できることがわかりました(Slavchev et al.2017)。 異なる細菌株がもつ水スペクトルパターンの違いは、細胞外代謝物が水構造に異なる痕跡を残すためであることが示唆されました(Nakakimura et al.2012)。
Nakakimura, Y., M. Vassileva, T. Stoyanchev, K. Nakai, R. Osawa, J. Kawano, and R. Tsenkova. 2012. “Extracellular metabolites play a dominant role in near-infrared spectroscopic quantification of bacteria at food-safety level concentrations.” Analytical Methods 4 (5):1389-1394.
Remagni, M.C., H. Morita, H. Koshiba, T.M.P. Cattaneo, and R. Tsenkova. 2013. “Near infrared spectroscopy and aquaphotomics as tools for bacteria classification.” NIR2013 Proceedings: Picking Up Good Vibrations:602.
Slavchev, A., Z. Kovacs, H. Koshiba, G. Bazar, B. Pollner, A. Krastanov, and R. Tsenkova. 2017. “Monitoring of water spectral patterns of lactobacilli development as a tool for rapid selection of probiotic candidates.” Journal of Near Infrared Spectroscopy:0967033517741133.
Slavchev, A., Z. Kovacs, H. Koshiba, A. Nagai, G. Bázár, A. Krastanov, Y. Kubota, and R. Tsenkova. 2015. “Monitoring of water spectral pattern reveals differences in probiotics growth when used for rapid bacteria selection.” PloS one 10 (7):e0130698.