どのような近赤外スペクトルにも数百のデータ点が含まれています。それらには対象物の物理的情報と化学的情報の両方が反映されています。
近赤外分光法と適切な判別分析を組み合わせることにより、植物のさまざまな健康状態をリアルタイムかつ非破壊的に判別することが可能となります。 さらにはウイルス感染などの生物的ストレス、または低温や乾燥などの非生物的ストレスを生きたままで継続的にモニタリングすることが可能になります。
病気の進行にともなう水の吸収スペクトルパターン(WASP)変化の追跡に基づき、ウイルス感染の影響を追跡するための方法論をもちいることができるようになりました。 Jinendraらによる研究(Jinendra etal. 2010)において、ダイズモザイクウイルス感染を簡便で迅速かつ非破壊的に検出することに成功しました。現在使用されている酵素結合免疫吸着法(ELISA)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ウエスタンブロッティングなどの方法と比較しても、アクアフォトミクスは費用対効果、スピード、精度の面で他の追随を許しませんでした。ウイルスに感染したダイズの診断は無症状の潜伏期に行われ、弱く水素結合した水と水和殻の吸収領域が病気の診断に非常に重要であることが示されました。
同様に、低温ストレス耐性の異なる遺伝子組み換えダイズの葉でも、水スペクトルパターンに差が見られました(Jinendra2011)。 耐寒ダイズ品種の同定に関する研究により、耐寒性が異なる遺伝子組み換えダイズは、吸収パターンの違いによって特徴付けられることが判明しました。
Jinendra, B. 2011. “Near infrared spectroscopy and aquaphotomics : novel tool for biotic and abiotic stress diagnosis of soybean.”PhD, Kobe University.
Jinendra, B., K. Tamaki, S. Kuroki, M. Vassileva, S. Yoshida, and R. Tsenkova. 2010. “Near infrared spectroscopy and aquaphotomics: Novel approach for rapid in vivo diagnosis of virus infected soybean.” Biochemical and biophysical research communications 397 (4):685-690.