水を通して土と植物をたどる — オープンアクセスの新論文

Yunosato Aquaphotomics Laboratoryと神戸大学の研究チームによる新しい論文が、オープンアクセスで公開されました。本研究では、近赤外(NIR)アクアフォトミクスを実際の畑で活用し、有機肥料の施用に対して土壌と植物の葉の水がどのように応答するかを、1作期を通して追跡しました。

論文「NIR aquaphotomics reveals water spectral patterns as multidimensional markers of soil–plant interaction under organic fertilization」は、『Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy』に掲載されています。

研究チームは、本研究について次のように述べています。

本研究は、生体システムにおける水の本質的な役割と、それを明らかにするアクアフォトミクスの可能性を示すうえで、重要な節目となるものです。本研究では、土壌と植物を、水の分子ネットワークを共通項とする一つの統合された生体システムとして捉えています。NIRアクアフォトミクスを用いて、有機肥料の施用前から、植物の生育・発達の過程、そして収穫に至るまで、土壌と葉の水のスペクトルパターンをモニタリングしました。

土壌と葉で連動して現れた変化は、水が土壌と植物の相互作用を統合的に伝える「レポーター」であり、「分子の鏡」であることを示しています。また、植物の生育段階や収穫期に特徴的な水のスペクトルパターンが確認されました。非破壊で、圃場でも適用できるこの手法は、施肥の評価、土壌や作物の健全性のモニタリング、そして植物の生育や食品の品質に影響を与えるプロセスの理解に向けた新しい方法を提供します。

研究の概要

圃場試験では、無施肥、豚ぷん、豚ぷん+植物由来の液体肥料の3つの土壌処理を比較しました。それぞれの区画でコマツナとホウレンソウを栽培し、ポータブル近赤外分光計を用いて、土壌と葉のスペクトルを継続的に測定しました。

2つの有機肥料処理では、土壌と葉のいずれにおいても、異なる水のスペクトルパターンとアクアグラムのプロファイルが見られました。これは、施肥方法によって土壌–植物システム内の水の組織化のされ方に違いがあることを示唆しています。なお、著者らは本研究が1作期のみの調査であることを挙げ、手法の適用範囲を確かめるには、複数の作期・複数の地点での今後の研究が必要であるとしています。

論文情報

Hadiwijaya Y., Dissanayaka S., Stoilov A., Nakanishi T., Sasaki T., Shigeoka S., Tsenkova R. NIR aquaphotomics reveals water spectral patterns as multidimensional markers of soil–plant interaction under organic fertilization. Spectrochimica Acta Part A: Molecular and Biomolecular Spectroscopy 365 (2027) 128697.

論文全文(オープンアクセス)はこちら:https://doi.org/10.1016/j.saa.2026.128697

グラフィカルアブストラクト:Hadiwijaya et al., Spectrochimica Acta Part A (2027), CC BY 4.0。本研究はYunosato Co., Ltd.の支援を受けて行われました。